「リモートワークになってから、社員のモチベーションが見えにくくなった…」
「在宅勤務で頑張っている社員を適切に評価できているか不安…」
「オフィスにいた時のような一体感がなくなり、チームの士気が下がっている…」
このような悩みを抱える管理職や人事担当者が急増しています。本記事では、リモートワーク環境でも社員のモチベーションを維持し、チーム力を高める評価手法について解説します。
リモートワークがもたらすモチベーション課題の本質

リモートワークの普及により、働き方の自由度が高まった一方で、新たなモチベーション課題が浮上しています。最も深刻な問題は社員の「孤立感」です。オフィスでは自然に発生していた雑談や何気ない相談、同僚の頑張りを目にする機会が激減し、多くの社員が「一人で働いている感覚」を強く抱くようになりました。この孤立感は、単なる寂しさにとどまらず、「自分の仕事が組織にどう貢献しているのか分からない」「困った時に相談できる相手がいない」といった不安を生み出し、パフォーマンス低下の要因となっています。
さらに、「成果の見えにくさ」も大きな課題として挙げられます。オフィスワークでは、社員が遅くまで頑張っている様子や、難しい問題に取り組んでいる過程が自然と見えていました。しかし、リモートワークでは「結果」しか見えない状況が多く発生し、プロセスでの努力や工夫が評価されにくくなっています。これにより、社員は「結果だけで判断されている」「頑張りが伝わらない」という不満を感じやすくなり、モチベーション低下につながっています。
また、「コミュニケーションの質的変化」も見逃せない問題です。オンライン会議は確かに効率的ですが、表情や雰囲気の細かなニュアンス、ちょっとした仕草から読み取れる感情などが伝わりにくく、メンバー間の信頼関係構築が困難になっています。特に新入社員や転職者にとっては、組織文化や価値観を理解する機会が限られ、「この会社の一員として受け入れられているのか」という帰属意識を育むことが難しい状況です。
これらの課題は相互に影響し合い、「頑張っても誰も見てくれていない」「チームの一員として認められているか分からない」「自分の価値が会社に伝わっていない」といったモチベーション低下の悪循環を生み出します。従来の年次評価中心の人事評価制度のままでは、こうしたリモートワーク特有の複雑な課題に十分対応できないのが現実です。
リモート環境でのモチベーション維持戦略
可視化によるエンゲージメント向上
リモートワークにおけるモチベーション維持の第一歩は、社員の努力や貢献を積極的に「可視化」することです。結果だけでなく、取り組み過程での創意工夫、他メンバーへの自発的なサポート、困難な状況での粘り強い対応など、従来見えにくかった価値ある行動を意識的に見つけ出し、適切に認識することが重要です。
具体的な取り組みとしては、週次の振り返りミーティングで各メンバーの「今週のグッドジョブ」を共有する時間を設けることが効果的です。この際、単に業務上の成果だけでなく、「新人メンバーへの丁寧な指導」「急なトラブル対応での迅速な判断」「チーム全体を考えた提案」など、多様な貢献を取り上げることで、社員は自分の価値が多角的に認められていることを実感できます。また、プロジェクトの進捗報告では数値や結果だけでなく、「どのような課題があり、どんな工夫で乗り越えたか」「どのような学びを得たか」といったプロセスにも焦点を当てることが大切です。
さらに、チーム全体の目標達成度や各メンバーの貢献状況をリアルタイムで共有できるダッシュボードを活用することも非常に効果的です。「今、チーム全体がどの段階にあり、自分の貢献がどのように全体の成功に影響しているか」を視覚的に理解できることで、個人の仕事とチーム目標の関連性を常に意識できるようになります。これにより、リモートワークで失われがちな「一体感」と「貢献実感」を取り戻すことができます。
頻度とタイミングを重視したフィードバック設計
リモートワークでは、フィードバックの頻度とタイミングが従来以上に重要になります。年に数回の正式な人事評価だけでは、社員は自分の方向性が正しいかを確認する機会が少なすぎ、不安や迷いが徐々に蓄積してしまいます。特にリモート環境では、ちょっとした疑問や不安を気軽に相談する機会が減るため、小さな問題が大きな課題に発展する前に対処することが重要です。
効果的なアプローチとしては、「マイクロフィードバック」の導入が挙げられます。これは、大きな成果や重要なマイルストーンを待つのではなく、小さな改善や日常的な良い取り組みをその都度すぐに認識する手法です。例えば、オンライン会議での建設的な提案に対して「その視点は重要ですね、ありがとうございます」、メールでの分かりやすい情報共有に対して「整理された報告で助かりました」、困っている同僚への迅速なサポートに対して「チームワークを感じる対応でした」といった具体的な声かけを、タイムリーに行うことが重要です。
また、360度評価(多面評価)をリモート環境に適応させることも有効です。上司だけでなく、同僚や他部門のメンバー、プロジェクトの関係者、場合によっては外部の顧客からのフィードバックも定期的に収集することで、多角的な視点からの評価が可能になります。特にリモートワークでは、直接の上司からは見えにくい部門間の協力関係や、オンライン会議以外での貢献が多いため、多面的な評価により社員の真の価値を発見できることが多いのです。
重要なのは、フィードバックが管理者から部下への一方通行ではなく、相互の対話的なコミュニケーションであることです。リモート環境では非言語コミュニケーションが大幅に制限されるため、「今の説明で分かりにくい部分はありましたか」「今の業務負荷はどう感じていますか」「何かサポートが必要なことはありますか」といった相互の確認と対話機会を意図的に設けることで、信頼関係の構築とモチベーション維持を両立できます。
チームの一体感を育む仕組み作り

リモートワークでは、物理的距離による心理的距離の拡大を防ぐため、意図的にチームの一体感を育む仕組みが必要です。これは単なる親睦のためではなく、チーム全体のパフォーマンス向上と個人のモチベーション維持の両方に直接寄与する重要な要素です。
効果的な手法として、「チーム目標の共有ビジョン化」があります。単に売上目標や納期といった数値目標を提示するだけでなく、「このプロジェクトが成功することで、顧客にどのような価値を提供できるか」「社会にどのような良い影響を与えられるか」「チーム一人ひとりの異なる強みがどのように組み合わさって成果を生むか」といったストーリーを共有します。リモートワークでは目的意識の共有が特に重要で、メンバー全員が同じ方向を向いて努力していることを確認する機会を定期的に設けることが不可欠です。
また、「非公式コミュニケーション」の機会を意図的に創出することも重要です。オンライン会議の開始前5分間を雑談タイムにして近況を共有したり、月に一度のバーチャルランチ会で食事をしながらリラックスした会話を楽しんだり、趣味や興味を共有するオンライン交流会を開催したりすることで、業務以外でのつながりを作る場を設けます。こうした場では、お互いの人となりや価値観を知ることで信頼関係が深まり、困った時に助け合える関係性が自然に構築されます。
さらに、「チーム全体での成功体験の共有」も一体感醸成に非常に効果的です。プロジェクトが完了した際には、最終的な結果だけでなく、途中でどのような困難があり、各メンバーがどのような形で貢献し、どのように支え合って成功に至ったかを具体的に振り返り、チーム全体で成功を祝う機会を設けます。リモートワークでは個人の達成感は感じやすくても、「みんなで成し遂げた」というチームとしての達成感を味わう機会が著しく少ないため、こうした意図的な振り返りと祝福の時間が重要になります。
リモートワーク特有の評価ポイント
リモートワークにおける人事評価制度では、従来のオフィス勤務とは異なる評価ポイントを重視する必要があります。まず最も重要なのは「自律性・自己管理能力」の評価です。リモートワークでは、時間管理や優先順位付け、自発的な学習や改善への取り組み、目標に向けた計画的な行動などがより重要になります。ただし、これらを単に「個人の責任」として評価するのではなく、組織としてどのようなサポートやツールを提供し、社員がそれをどのように活用して成長しているかという観点から評価することが大切です。
次に重要なのは「デジタルコミュニケーション能力」です。オンライン会議での効果的な発言や聞き手への配慮、メールやチャットでの分かりやすく簡潔な情報伝達、デジタルツールを活用した効率的な協働能力などが、チーム全体のパフォーマンスに大きく影響するためです。特に、画面越しでも相手の立場に立った配慮ができるかどうか、非対面でも信頼関係を構築できるかどうかは、チームワークの質を大きく左右します。
また、「成果創出への柔軟性」も新たな重要な評価観点となります。リモートワークでは、予期しない環境変化や技術的制約、家庭環境の影響などの中でも工夫して成果を出す能力が求められます。困難な状況をどのように分析し、どのような創意工夫で乗り越えたか、限られたリソースの中でどのように優先順位をつけて対応したかといったプロセスを重視し、単なる結果主義ではない多面的な評価を行うことが、社員のモチベーション維持と能力向上につながります。
テクノロジー活用によるモチベーション支援
リモートワークでのモチベーション維持には、適切なテクノロジーの活用が不可欠です。YELL BASEのような統合型の評価支援システムは、リモート環境特有の課題解決に大きく貢献します。
特に効果的なのは、日常的な「グッドジョブ」の記録と共有機能です。リモートワークでは、同僚の頑張りや貢献が物理的に見えにくいため、意識的にポジティブな行動を見つけて記録し、チーム全体で共有することで、全員のモチベーション向上につながります。また、360度評価(多面評価)のデジタル化により、物理的に離れていても多角的なフィードバックを効率的に収集できます。
さらに、進捗の可視化やチーム目標の共有機能により、個人の仕事とチーム全体の目標との関連性を常に確認できる環境が整います。リアルタイムでのフィードバック機能も、リモートワークで失われがちな即座の認識や対話機会を補完する重要な役割を果たします。こうしたシステムの活用により、物理的距離を感じさせない密度の高いコミュニケーションと評価が実現できます。
まとめ:リモートワークでも諦めない、チーム力向上への道筋
リモートワークにおけるモチベーション維持は、従来の人事評価制度では対応しきれない新たな課題です。物理的距離を心理的距離にしないためには、可視化の徹底、頻繁で双方向のフィードバック、意図的な一体感の醸成という3つの柱が重要になります。
特に重要なのは、「結果だけでなくプロセスも評価する」「個人だけでなくチーム全体の成長も重視する」「年次評価だけでなく日常的な認識も大切にする」という根本的な視点の転換です。これらの取り組みにより、リモートワークの制約を乗り越え、むしろ新たな強みとして活用できるチームを作ることが可能になります。
テクノロジーを適切に活用しながら、人間的なつながりも大切にするバランスの取れたアプローチが、リモートワーク時代のモチベーション維持とチーム力向上の鍵となるでしょう。
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